DNVによるコンクリートと鋼製の下部構造の比較研究
過去数年にわたり、浮体式洋上風力発電業界では、コンクリート製フローターは鋼製フローターに比べて大幅に低いカーボンフットプリントを有すると示す、さまざまな比較報告書が発表されてきた。
この点に関する主要な参考文献は、2022年にDNVによって発表された報告書である。この報告書は、ノルウェーにのコンクリート製フローターの製造ヤードの開発を目指すノルウェー企業 WindWorks Jelsa AS の委託により作成されたものであるにもかかわらず、現在でも業界の基準的な参考資料として扱われている。
浮体式洋上風力産業の信頼性を確保するためには、鋼製フローターにおける実現可能な実行スキームをより現実的に反映した前提条件を考慮し、両材料のより公平な比較を可能にすることが不可欠である。この観点から、DNV報告書の前提条件は再評価される必要がある。
Ocergyでは、鋼製セミサブマージブル型フローター「OCGWind™」を開発しており、2026年夏の運転開始を目指した3MW実証機を計画している。また、量産化の容易性を重視した独自技術を開発してきた。
当社はDNV報告書の手法および結果を精査し、鋼製フローターに関するいくつかの重要な仮定について、見直しと修正が必要であると判断した。
- 北海と同等の環境条件下における15MW風車を対象としたOCGWind設計に基づくと、想定されている鋼製フローターの質量はDNV報告書の前提より大幅に軽量である。
- アジアでの製造を想定する場合、OCGWindのようなモジュール化設計を考慮し、完成フローターではなくサブコンポーネントとして輸送することで、デッキスペースを最適化できる点を反映した輸送時排出量の評価をすべきである。
- 現在、主要な世界的鉄鋼メーカーは、OCGWind設計で要求される板厚および材質において、商業規模での再生鋼供給が可能であり、再生鉄利用率に関する感度分析も考慮すべきである。
これらの感度分析から得られた結果は、DNV報告書の結論とは大きく異なるものであり、鋼製フローターに対して新たな視点を提供する。
- やや不利な前提(中国での鋼材供給および製造)を仮定した場合でも、OCGWindフローターのカーボンフットプリントはDNV報告書におけるコンクリート製セミサブと同等である。
- 欧州における戦略的再工業化が重視される現在、鋼材供給および製造を欧州と仮定した場合、OCGWindフローターのカーボンフットプリントはコンクリート製セミサブに比べて60%低減される。
本報告書は以下に掲載している:Comment paper – DNV comparative study concrete vs steel substructure
さらにこれらの検討は、より広範な示唆をもたらす。もし風車メーカー(WTG OEM)がタワーやナセルフレームにもグリーンスチールを採用した場合、OCGWindの技術に基づく浮体式洋上風力発電所のライフサイクルCO₂排出量は、水力発電などの最も低炭素なエネルギー源に近づく可能性がある。
低炭素フットプリントは、軽量な鋼製モジュール構造の利点の一つに過ぎない。
浮体式洋上風力発電によって毎年数ギガワット規模の新規電源供給を実現するためには、基礎構造に以下の二つの要件が求められる。
- 迅速な展開
- 低コスト
これらの両面において、OCGWindのような鋼製モジュール型セミサブマージブルは、コンクリート製フローターよりも大きな優位性を有している。鋼製モジュールは既存のサプライチェーンを活用して効率的に製造でき、高価な新設設備投資を必要としない。また、完成体ではなくモジュールとして輸送することで、大型セミサブマージブルの輸送船よりも小型でコスト効率の高いデッキキャリアを利用できる。マーシャリング港では、単一の組立ステーションで年間50基以上のフローターの供給が可能である。
これに対し、コンクリート製フローターは、構造物の極めて大きな重量と陸上移動の困難さから、大規模な新設工場および複数の同時組立が可能な大型建設岸壁への巨額投資を必要とする。さらに、コンクリート製フローター1基を完成させるまでに長時間を要するため、同等の生産能力を得るには多数の製造ステーションが必要となる。こうした設備が数年間しか稼働できない可能性を考慮すると、単価は非常に高くなる。
加えて、プロジェクト終了時には設備の撤去および解体計画の検討が必要で、コスト拡大の要因となる。巨大なコンクリート構造物を安全に解体するための専用施設が必要となり、回収される原材料の再利用性や再販価値は極めて限定的である。この作業には膨大な時間、エネルギー、特殊機械および専門労働力を要するため、解体コストは初期製造コストと同程度に達する可能性がある。
これに対し、鋼製モジュール型セミサブマージブル浮体構造物は、重量が軽く主要部品の解体可能であるため、撤去・解体がはるかに容易である。また、鉄スクラップは完全にリサイクル可能で、高い再販価値(リセールバリュー)を有する。
さらに差別化できる技術的要因はいくつも存在する。次回の記事では、鋼製モジュールの完全工業化製造と、鉄筋コンクリート製浮体構造物の製造手法を比較する。